日刊せみなりーBLOG

君の椅子

更新日:2018/10/14

知らない
とは、

時に
想定外の感動に出会うこと

でもある。
なんてカッコいいこと書いたが、

昨日、
私は、

民家再生協会主催の
フォーラムに行ったのだが、

最初に行われる講演は、
磯田憲一さんの、

『君の椅子プロジェクト』
だった。

はて聞いたことないけど。
旭川の家具作りの話かしら。

という
なんとも恥ずかしい限りの

講演を聞く姿勢。
主催者が

識者集団でもあり、
聞いて損はないはず。

くらいの認識で
会場に入った。

司会者が話された磯田さんの
プロフィールに寄ると、

北海道副知事も
された方らしい。

ふむふむ

で、登場した磯田さんは、
優しいふつうのおじさまで、

マイクを持ちながら
自然体で、

その君の椅子について
話し始めた。

始めたきっかけは、
あまりにも多い子どもの虐待や

自殺に心を傷めていた時に読んだ、
一つの投稿がきっかけだという。

椅子は、
人の居場所、

その人が
そこにいることを

たとえ、

その人が
そこにいなくなっても

感じることができるもの。

私には、
磯田さんの話がそう聞こえた。

磯田さんは、
全ての子どもたちに、

その存在の素晴らしさを
伝えたかったのだと思った。

磯田さんは東川町と連携して
東川町に生まれた子どもたちに

毎年、
このプロジェクトに賛同したデザイナー、

木工家具職人の方々が作った椅子を
贈っている。

その活動は、
北海道の市町村のみならず

長野の村にも広がっているが、
何よりも、

このプロジェクトの意味が
よく理解できたのが、

あの3月11日に
被災地で生まれた子たちに

椅子を贈ったという話だった。
あの日、

104人の命が
被災地で誕生していたそうだ。

映像で
椅子を贈られた子どもと

両親が映されたが、
母親たちの中には

津波で肉親を失った人も
おられたが、

たとえ、
肉親を失っていなくても、

そのお母さんたちの思いは
計り知れなく、

『この子の誕生を
心から祝っていいものか、

ずっと
悩み続けていたけれど、

この椅子を貰って、
初めて、

この子の誕生を
祝えた気がします。』

と、皆さんが話していた。

これは、
生まれてきた子どもを

椅子という居場所を
作ることで

祝福するプロジェクトだけど、

私は、
子どもをこの世に生み出した母親を

祝福する意味もあるのだ。
と、知った。

命を生み出すことに
誇りと喜びを

母親が心から感じられることが
大切なのだと

磯田さんの話を聞きながら
思った。

北海道の樹木で作られ、
その子の名前と生年月日が彫られた、

世界にひとつだけの椅子。
長い年月をかけて、

その子と歩む椅子。
その椅子を見るたびに、

母も父も
一つの命を

この世に送り出したことを
喜べる社会でありたいと

思った。

お節介の達人
マチづくりのご相談承り役 中野むつみでした。

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