『むつみさん、クリップを買ってください。』

むつみさんは自分では節約節約とうるさい方ではないと思っているが、

職員はうるさい方だと思っているらしい。

因って、クリップを買ってくださいなんて　急にラガーマンM君が言ったりする。

うちの会社の商品は技術だが、それは報告書と言う形でお客様に渡される。

公共事業に関わる書類は膨大で、図面やら計算書やら、クリップで纏められ、

人別・物別に出来上がった物から引き出しに入れられチェックを待つ。

仕事が重なるとクリップの出番が増え、クリップの取り合いが始まる。

『ちょおと～引き出しに隠している人いるんじゃあない？

あ・！モゴモゴN社長が犯人だ～』

『あ！誰だ、俺のクリップ、持っていったやつ～』

『モゴモゴN社長！クリップは会社のものです！』

なんて、ことになるのだ。

『クリップを買うのはいいんだけど、私、目玉クリップがいいな～

黒いのは力がいるんだもん』

『目玉クリップって何？』

そこに居たみんなが聞いた。

るるる・・・

知らないのか、いつも使っている目玉クリップを・・

『金で出来ていて、掴むところが丸くなっているもの・・』

『？・・・これですか？』

そうそう・・それです。力が無くても開いてとめられるのがいい。

『でも、留める力もゆるくないですか』

ビベロYちゃんは、今一派・・

『それ、引き出しに引っかかるんですよね・・』

スノーマンK君も、今一派・・

『いや～これは止めましょうよ、使いにくい・・』

ラガーマンM君は、反対派・・

そうなの？そうかな～・・

みんなが好きなクリップは、△にステンレスのПが付いている。

Пは、逆にも動くから留め終わったら紙側にパチンと回し邪魔にはならない。

『でもさ～、クリップが大きくなったら開かないんだよね～』

『むつみさん、ペンチで開いたらどうですか？』

現業部門かと思うほど、大工道具の私物が豊富なスノーマンK君が言った。

ペンチで開く力もない・・

『暫く買っていないから進化しているかも知れませんよ～』

そうですね。

むつみさん希望の目玉クリップはあっけなく却下された。

たかがクリップ、されどクリップ・・

これぞ、むつみさんが目指している民主的な職場！・・・・だ。