雪かき話が盛んになり始めた頃、
朝会で、綺麗好きN君が言った。

『朝、早く起きて家の雪かきをして、
それから、会社に来ます。

昨年は一度も遅刻をしませんでした。
今年も挑戦します。』

まあ・凄い！

綺麗好きN君は北区に住んでいる。
会社は南区だから、かなりの距離だ。

ふと・・風景が目に浮かんだ。

雪の降る朝・・
一人もくもくと雪かきをする綺麗好きN君・・

遅れてお父さんも参加・・

『お前、
そろそろ会社に行かないと遅刻するぞ・・』

家ではお母さんが起きて、
朝ごはんの仕度・・

『ご飯、やっぱり食べていかないの？』
『大丈夫・・』
『気をつけていくんだよ～』

で、
綺麗好きN君は会社に向かう。

お父さんは、
綺麗好きN君の愛車ジムニーを見送りながら、

最後の仕上げの雪かきだ。
これは、

全部、むつみさんの想像だが・・
どうお？綺麗好きN君・・違うかな？

綺麗好きN君は、
東京からのUターン組だ。

高校は釧路高専、大学は室工大、
そして・・・東京の大手ゼネコンへ

ずっと離れて暮らしていたけど、
ある日息子が戻ってきた。

休みなく働く息子を、
きっと心配しているだろうが、

冬の朝、
けして朝が強い綺麗好きN君ではないのに、

早起きして、
家の雪かきをしてくれる姿を、

お母さんは・・
どれほど・・嬉しく思っていることだろう。

ああああ・・
うらやましい・・・

全て想像だけど・・・
うらやましい。

3.11の日、帰り際、
綺麗好きN君の携帯がなった。

『うん、こっちも凄く揺れたよ～』

優しく話している相手は、
きっとお母さんだと思う。

想像だけど、お母さんだ。

息子の優しい声に、
不安も失せたのではないかしら・・

あああああ・・
うらやましい・・・

全て想像だけど・・
うらやましい

全部、想像だけど・・
一人ため息の・・・冬の朝だ。