日刊せみなりーBLOG

教え子・・

更新日:2012/01/10

もうかなり前になるが、
夫の兄がクモ膜下出血で倒れた。

『厚岸から救急車で釧路に運ばれた、
手術をしている』

夫と私は取るものも取らずに、
夜行寝台車で釧路に行った。

朝早く病院に駆けつけると、
まだ元気だった夫の両親、

兄家族が一睡もせずに、
病院の廊下にいた。

『むっちゃん、
夜になると不安が募って、

いいことを考えられない』
憔悴しきった顔で兄嫁は言った。

朝日が昇りきった頃、
人目で漁師とわかる中年夫婦が、

走るようにして、
兄嫁のところにやってきた。

『先生は大丈夫なんか?
早く来たかったけど、

牡蠣をあげなくちゃ~なんなくて~』
その漁師の男性は兄の教え子だった。

兄は小学校の教師をしていた。

『俺、
悪だったから先生に随分怒られたけど、

可愛がっても貰った。
もし、先生が死んじゃったら・・・』

まるで小学生のように、
泣いていた。

昼前、面会の許可が出て、
その御夫婦も兄にあいに行ったが、

家族の誰と話すより、
兄は嬉しそうで・・・・・、

その御夫婦も、
『良かった・・良かった・・』

何度も言って、
男泣きしながら帰って行った。

夫が言った。
『教師って良い商売だな・・・・』

確かに、あんなに思って貰えるなんて、
教師は幸せな仕事だ。

職業の中で、
そんな【幸せ】を感じられるのは、

少ないかも知れない。

兄が元気になってから、
その話をした。

『でも、そんな関係になれるのは、
ほんの僅かな子だよ。』

兄は照れくさそうに言っていたが、
やっぱり嬉しそうだった。

まさに教師は、
【使命】を職業にしているようなものだ。

羨ましさ丸出しの夫を見て言った。

『駆けつけてくれる教え子はいないけど、
駆けつけてくれる社員はいるでしょ・・』

『そうだな・・・・』

それ以来、
夫婦で脳ドックに行っている。

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