近頃、
いいえ・・だいぶ前から物忘れがひどい。

特に、
人・物・地域なんかの名前が出てこない。

これは、老化現象で、
認知症の予防には、兎に角、思い出すことが重要らしい。

調べるより、思い出す！
そうかそうか・・と、思い出す努力をするのだが・・・

先日、
函館駅から厚沢部までバスに乗った。

大野町を通って江差に向かうバスだ。
大野町の住宅街には、

実のなった木々が沢山茂っていた。
まだ、実は青い。

（あ・この木・・・あの木・・だ）
大野町では多くの家で植えている。

良い匂いがする実・・・・。
（ボケみたいな実で・・・えーと・・）

口元まで出てきそうなのに出てこない。
（葉っぱは波打っているんだよね・・えーと）

イライラする。
（そのうち、思い出すさ・・）

一度、追求をストップさせる。
バスはどんどん山に入っていった。

山々の木々を見ていると、
あ・この木・・・あの木だ。

今度は、
大きな木で・・葉っぱが細く、上に華奢な花が咲く。

えーと・・えーと・・
えーと・・えーと・・

あ！思い出した。
ねむの木・・ねむの木だ！

あーーー！スッキリした！

で・・周りの木を見るのを止めた。
きっと、また・・

思い出さなくて、
イライラするに決まっているから・・

そして、
あの木の名前を思い出さないまま、

と言うより、
思い出していないことも忘れて、

昨日、小樽に行った。
その帰りのJR・・・

夕暮れ時の、混雑の中で、
私よりやや年上と思われる女性が二人話していた。

『いい匂いがするのよね、
でも、食べられないの・・・かりんの仲間なんだけど・・』

『そうなの？』
『そう、そうなのよ、マルメロは・・・』

あ！そうだ！
あの木は、マルメロだ！

厚沢部行きのバスの中、
どうしても思い出せなかったのは、

マルメロ！

ああああ・・でも・・
なんで、こんなところで聞いたんだろう・・

マルメロは、
余り一般的ではないと思うのに、

なんで、
偶然聞いちゃったんだろう・・

（言わないで！）
自分で思い出さないと、

認知症の訓練には、ならないから！

スッキリしたけど、
自分で思い出さなかった事に、

少々腹立たしさを覚えながら、
札幌駅に降り立った。

マルメロは、
北斗市大野町ゆかりの樹木である。