日刊せみなりーBLOG

家と人生…

更新日:2012/10/23

看護婦時代に務めていた病院は、
フィールドと言って、

患者さんの御宅を訪問し、
患者さんの生い立ちなどを聞き取ったりしていた。

疾病を、
生活と労働から捉えるという病院だったからか、

はたまた、
生き様から人生を学び、

患者さんは、
人生を生きている生身の人間だ、

と意識させる学習目的だったのか、
多分両方だと思うが、

随分、多くの方のお話をお聞きした。
そのせいか、

今の職業に変わり、
補償の調査でお邪魔しても、

色々人生をお聞きしたくなる。
人生の先輩のお話は、

時に母の人生と重なり、
時に父を思い出す。

今日、
お逢いした老婦人は、

札幌から小樽に嫁入りされた方だった。
とても上品なその方は、

ご主人のお父様が、
13歳で石川県から北海道に渡り、

丁稚奉公をして、独立し、
商売で成功し建てた家を、

誇りを持って、守っていらした。
『自分が生きているうちは、貸すことも売る事もしません。』

お義父様のご苦労を思い、
ご主人亡き後も、嫁として家を守っている84歳のその方は、

上品にそして毅然と話された。
『私はね、

札幌育ちで小学校の時の修学旅行で小樽に来て、
小樽駅を見て、

なんて素敵なんでしょうと思ったんですの。

ですから、
小樽の方との縁談がきたとき、

あの町に住むのも悪くないな、
って…ね、そんな感じで決めたんですのよ』

その老婦人は、
小樽で幸せに暮らしてきたようだ。

その素晴らしい家も、
小樽も愛おしいようだった。

小樽港が見えるその家で、
三人の子供を育て、

舅姑に仕え、
今は一人でしっかり生きるその姿は、

母のようだった。

本州に住む娘さんが、
毎日のように電話やメールをくれると、

嬉しそうに話されていたが、
実家の横に会社がありながら、

滅多に顔を出さない自分が恥かしい。

(明日は顔を出そう)

そう思いながら、
小樽を後にした。

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