短期助っ人Tさんは、
女性の1級建築士、

北大出の才女だ。
『ねえ～うちの社員にならない・・？』

と、ラブコールを送って、
早や5年だ。

短期はやがて長期になっているが、
『短期がいいので・・・』

と、名目は短期・・

『あら・・それ、私、聞いていませんよ。
そういうことは早く言って下さい。』

『ホンワカHさん、読み取る力をもってくれ～はなし！
野帳は決められたように取って来て下さい。』

『むつみさん、この庭木は何処にありましたか、
配置図が書けません。』

は～い・・はい。
手厳しいお言葉も近頃は飛び出るが・・

ビベロYちゃん、早や打ちKちゃん、チェックマンA子さん、
文章マシーンA子さんには優しい、短期助っ人Tさんだ。

その短期助っ人Tさんが、
今日も自家用車で通勤してきた。

それを見ていたスノーマンK君が、
言った。

『わ～俺の車の前には、
短期助っ人Tさんには止めて欲しくない！』

『ビベロYちゃんの車との間はこれっしか、
空いていないよ。』

親指と人差し指を、
目いっぱい広げて見せた。

『短期助っ人Tさんは、車から降りて、
あら？こんなに近かったのね。って笑っていた・・・』

中々豪快である。
近頃は女性の建築士が人気だから、

何人か手伝いに来てくれたが、
社員になるのは断わられる。

補償チームも建物等調査チームも、
設計やデザインではなく、

今ある建物の調査だから、
暑さ寒さも仕事のうち、

屋根裏、床下、蜘蛛の巣だらけの倉庫まで、
身体を使っての仕事だから、

今ひとつ、人気が無いのだ。

（まだ、設計は諦めきれないのかな？）

そんな私の視線を避けるように、
短期助っ人Tさんは、

ビベロYちゃんの向かいの席で、
せっこせっこと図面を書いて積算中だ。

おーい・・
地味な仕事だけれど、

やりがいはあるよ～
心の中で・・叫んでみた・・・。