日刊せみなりーBLOG
小樽とBARと……
更新日:2013/09/16
小樽の古い建物を、
見かけはそのままで内部を快適にして住まう…
そして、
あの何とも言えず人を包み込む不思議な街、
小樽を残し続けたい。
と思い、活動を始めて二年がたった。
色々試行錯誤を仲間としていたが、
ある日、
既に、
古い建物をショップなどに活用している若者が、
多数いることに気が付き、
『まずは、活用例を紹介して、こんな使い方もあり!』情報を流そう!
となった。
善は急げと、取材を始め、
本日も二件のお店にお邪魔するのだが、
取材の前には、
①足やネットでお店を見つける。②行って見る。
③取材を取り付ける。
なんて手順を踏むが、
先日は②行って見る。で、BARを訪れた。
古い木造の集合店舗、
それぞれが素敵な趣あるお店だが、
硝子がはめ込まれた古い木製開き戸を、
外側に開いたまま、そのBARはあった。
10人も入れば一杯になる店内は、
古い椅子、小さなベンチ、などが置かれ、
お客が顔を合わせて座る感じだ。
常連さんが、既に四人座っていた。
ちょっと入りにくい感じだけど、
そんな事を言っていては②にならないから、
『いいですか?』
と、入口奥の木製ベンチに座った。
『俺、今日は映画に行ってきたの。
似顔絵、書いてあげる。』
かなり酔っている男性客が話しかけてくる。
が、嫌ではない。
みんな、友人なのか、
ニックネームで呼び合っていた。
その中に、
すっぴん美人の若い女性が居た。
今時、
こんなに自我を持った若い子を見るのは久しぶり、
と思わせる人だった。
そのうち、先の酔っ払い男性は、
『ビリヤードをして帰るわ』
と千鳥足で帰って行った。
代金は1500円、
自我のすっぴん美人さんは、
ビールを二杯飲み、
タバコを吸って、みんなと話して帰って行った。
代金は1000円、
入れ違いに、ジャージ姿の60代の男性がやって来た。
『⚫⚫ちゃんは帰ったの?』
ずっと居るもう一人の男性客が、
『帰ったよ』
みんなは私には分からない地元の話をしていたが、
『どこからきたの?』
私に話しかけてくれた。
『札幌です。今日はこのBARを目的に来ました。』
『いい店だよ。ママがいい。
ここはね、自分の家の居間で友達と飲んでいる感じさ』
ジャージ姿の男性は、ビールを二杯飲み、帰って行った。
『お客さん、お腹空いているの?』
ママが私に聞いた。
『いいえ、食事をしてきましたから』
『良かった。何もなくて』
『そういやあ、ここは何も出ないな。
別に食べにくるわけじゃあないから』
ずっといる常連さんが言った。
何を飲んでも500円、
この店は、
ママが八年前に札幌から移り住んで開いたお店、
ご主人は芸術家だから、
店に掛かっている絵画も、
針金で作った動物たちもご主人の作品だ。
『俺たちはみんな、ここで知り合って友達になった。
苗字も仕事も知らない。
ニックネームだけで呼ぶ。』
常連男性が言った。
『じゃあ、私も仲間にいれて下さい。
私はむつみさん、と言います。』
『ああ、また会おう』
気がついたら三時間近く居た。
まるで、上質な映画の一場面に、
入り込んだような時間だった。
小樽は不思議な街だ。
路地、建物、人までが、映画のようだ。
このBARは、
紹介しないことにした。