58歳と10ヶ月にして、
初めてパスポートを持った。

そのパスポートに張られた写真は、
明らかに年相応のもので、

納得が行かなかったが、
仕方なし。

根が出無精だから、
『そのうちね』と言いつつ、

海外旅行にはトンと、
興味がなかったので、

パスポートは、
持たずに一生が終わると思っていたら、

『行きましょ～台湾へ』
ラガーマンM君に押し切られる感じで、

今年の3月、
社内旅行が決ってしまった・・。

『トイレはどんなん？』
『ちゃんとしたところは、ちゃんとしてます。』

『食べるものは大丈夫？』
『大丈夫です！』

大丈夫どころか、
『●●と▲▲が会いにきてくれて、

美味しいところに連れて行ってくれます。』

●●さんと▲▲さんは、
台湾から北大に来ていた留学生だ。

（名前を伏せているのではなく、何回聞いても忘れる）

北大生協でアルバイトの募集をかけたら来た青年達で、
『台湾に帰ったら、弁護士なんだって』

という秀才だが、
うちの会社を気に入ってくれて、

台湾に戻った後も、
社員たちとフェイスブックで交流をしていた。

『で、案内役をしてくれるの？』
『はい、とても楽しみにしてくれています。』

うれしいなあ～

で、
『むつみさん、パスポート、いつ取りにいくのですか？』

と、急かされ、
というか、

関係者の中で一番最後、
昨日、取りに行ったのだ。

『中野むつみさんですね。本人確認をします。』
と係のおじ様に言われ、

『干支は？』『干支？ああ・・ひつじです』
『部屋番号は？』『何の？ああ・・マンションか・・』

の問答の後、
晴れて頂いたのは、赤いパスポート。

10年用にしたけれど、
あと何回海外に行くことが出来るかしら。

絶対行く事はないと思っていた台湾、
留学生が待っていてくれる台湾に、

二ヵ月後、出発予定だ。