うちの会社は、
入札で仕事が決まる。

『今回は何％でいれますか?』
お役所から考え方の基本が提示されると、

うちで出来る１００％の金額をどこまで落とせるか、
議論をする。

財政担当の私は、
『高く入れないと赤字になるわ』

売り上げが欲しいモゴモゴN社長は、
『落とせ！』

仕事がしたい技術は、
『負けられません』

で、もめる。
まあ、最後は、

『この線で入れるしかないですね。
これなら、どうにか黒字に持っていける……と思う。』

と言う金額でいれることになる。
相手ありの入札だから、

一円でも安いところが落とす。
が、『え？そんなに高く入れたの？』

うちが落札しても、
よそが高いと、

損をした気分になるから、
入札は難しい。

で、
本日は私が入札に行った。

入札金額を決めたのだから、
ぐちゃぐちゃ考えず、

落札のみ念じよう！
と、朝から気合を入れる。

まず、
ショッキングピンクの腕時計をし、

そして、
母親に買ってもらった金のフクロウのペンダントを、

胸元に。
二つとも、幸運の女神だ。

なぜか、
これらをつけていると良いことがある。

さて、出発！とバス停へ。
青空の下、良い気分だ。

頭の中は、
入札情景でいっぱいだ。

地下鉄を降りると、
急にトイレに行きたくなった。

今時の地下鉄のトイレは綺麗だ。
用を済ませ、手を洗おうとして、

鏡に映った自分の顔と目があった。
いつもの如き、

口紅は指していない。

冴えない顔色だった。
ダメだわ！

鞄から口紅を出し、
珍しく、紅を指した。

よし！
時計、ペンダント、赤い口紅！

いざ、出撃だ！

で、
結果は、『落札したよ！』

三種の神器は、会社では内緒だ。
だって、なんか、恥ずかしい……

見かけはクールで有りたい私だった。