日刊せみなりーBLOG
水に流せる?!
更新日:2014/09/07
金曜日の午後、実家を訪ねると、
89歳の母が、トイレでなにやらやっている。
『どうしたの?』『朝から、トイレの水が流れないの』
あら、大変。
私も、まあるいシュポシュポで、
便器の排水部分を、
シュポシュポしてみるが、非力なので陰圧にならない。
その日、私と母は用事があり、
『帰ってきたら、芳にやって貰おう』
と、トイレはそのままにして出かけた。
母はトイレが使えない間、近くのベスト電器までお借りしに行ったらしい。
出先から帰り、
会社にいる夫にシュポシュポを頼んだ。
うちの会社は実家の隣にある。
夫の力は強く、
まあるい吸盤は勢いよくキュウーンとなったけれど、
水は流れなかった。
『これは、頼むしかないな』
結局、夕方遅く業者さんに来てもらったが、
『これは、排水管で詰まっている可能性が大です』
と、
トイレの治療は翌日に持ち越された。
さて、問題はそれまでどうするかだ。
『お母さん、会社のトイレを使えばいいけれど、
夜が困るね。
うちに泊まりにきたら?』
と誘ったが、首を縦に降らない。
結局、納戸にあったポータブルトイレを降ろしてきた。
89歳とはいえ、
毅然とした母は、ちょっと考えていたが、
『そうだね。使うしかないね』
背に腹は変えられない。
翌朝、母を訪ねると既にポータブルトイレは、
洗われていた。
『会社のトイレを借りて捨てたよ。
便器は外で洗ったし。』
私がしようと思っていたが、
遅かったようだ。
午後過ぎ、
横入り現場だったのに、思いのほか早く業者さんが来てくれた。
便器を外し、排水管の高圧洗浄をかけた。
『何か、柔らかいもので塞がれていました』
やれやれ、良かった。
実家は築42年、
建てた時は下水が完備しておらず、
浄化槽をつけた。
その後、下水に繋げた。
水洗トイレが普及し始めた頃だ。
『排水管が長いから気をつけてと言われたわ』
母が思い出したように言った。
運が良かったのは、
3世帯の集合住宅仕様だったため、
排水管が太かった事だ。
それにしても、何が詰まったのかしら。
母は、ティッシュ説を言った。
『私はね、水に流せるティッシュでも、流さないのよ』
でも、誰もトイレでティッシュは使わない。
が、その母が言った水に流せるティッシュで、
思いついた。
『わかった!水に流せるおしりふきだわ!』
夏休み、我が家の孫7人が、
母の家に入り浸っていたが、そのうち3人がオシメ族。
私は、【水に流せるおしりふき】を買って来ていた。
傾斜の緩やかな長い排水管に、
せっせと【水に流せるおしりふき】を流した孫やひ孫は、
夏休み終了と共に帰った。
そのあと、母は、一人になりトイレの使用頻度は減った。
大量の【水に流せるおしりふき】は、
水に流れず、排水管で止まり、
少しずつ水を吸い込み、
金曜日の朝、ピタッと排水管に張り付いたのだろう。
『もう、水に流せるおしりふきは買わないね。』
『そうして』母は、笑っていた。
それにしても、と思う。
トイレが詰まっても、トイレと格闘し、
隣が会社でも、
公私混同はしないとベスト電器まで歩き、
自分の排泄物は自分で始末するという89歳の母は、
凄い。
私にも、その毅然さが欲しい…
『あんた、今の若さで私みたいなどじをしているようでは困るわよ』
昨日の帰り際、母が言った。
その通り!
でも、お母さん、
疲れは後から出るからね。
いつまでも、いて欲しい母だ。