うちの会社は、植物が育たない。
というより、まめに世話をする人がいないから。

なのに、
花が咲いた。

名前もわからず、
その鉢がうちの会社に来てから、

何年も何年もたって、
初めて花が咲いた。

多分、観葉植物だと思うが、
誰が持ってきたのだったか…

もう枯れたのかと思っていた時、
一度退職して、また戻ってきてくれた早起きO君が、

毎日水をやり、
世話をしていたら、なぜか上にすくすく育ち、

プラスチックの支え棒に支えられて、
へなへなだけど、

まっすぐ上に延びて、
床に鉢を置いたら、ちょうど私の目線位の位置、

てっぺんに、
小さな赤い花を咲かせ始めた。

残業で、
夜中まで毎日部屋が暖かかったからだろうか。

早起きO君は、
早くに出社し、花に水をやる。

初めは、
誰が水をやっているのかわからなかった。

『早起きO君がやっているんですよ』
去年の今頃だろうか、誰かが教えてくれた。

それから毎日、
誰が褒めるわけでもないのに、

早起きO君は、水をやっていた。
青い葉っぱは、薄くて、何度も枯れそうになったけれど、

頑張っていた。
みんなは忙しくてあまり目をやることもなかったが、

数日前、
てっぺんに蕾が膨らんだのを見つけた。

『この木、花が咲くんだね！』
びっくりした…

そして、今日蕾が一つ、ふたつ、三つ…
と開いて小さな小さな花が咲いた。

早起きO君の粘り強い一歩が、
花を咲かせた。

殺風景な事務所で、
恥ずかしそうにしている可憐な花だった。