朝、会社の車庫の中で、
社車走行距離表をチェックしていると、

ホンワカH君がやってきた。
『だれか、いるの？』

と聞いたので、
『わたしだよ。』と答えると、

『なんだ、むつみさんか…
いえ、もし、昨日の現場組が後始末をしているなら、

手伝おうと、思ったんです。』
と、言った。

まあ！なんて、親切なんでしょう！
まだ、始業前なのに！

と褒めたら、
照れていたが、これは本心だ。

モゴモゴN社長が作った今年度方針の一番は、
【お互いを思いやれる心】を持って仕事をしよう！

だが、
これが、中々難しい。

長尺に、
今年度方針を書いて張り出したが、

これが、私の真ん前にある。
毎日見ているが、

常に、意識の外にある。
ところが、

別に意識しなくても出来る人達がいる。
その代表が、ホンワカH君だ。

自分が行った現場でもなく、
始業前なのに、片付けを手伝おうと考える。

ホンワカH君にしてみれば、
なぜに、むつみさんは注目する？

と言う心境らしいが、
『だって、すごいじゃん！』

と、軽薄に言うしかなかった。
それは多分、

私にかけているとこで、
だから、感動したのだと思うのだ。

誰かの事を考える、
親切にする、

打算の前に、
体が動くということかしら。

実は、
モゴモゴN社長もこのタイプだ。

いえいえ、
むつみさんは打算的ではありません。

ただ、
疲れていて体が動きたくないと言うだけです。

あ・この心情を利己と言うのだ。

現場組の片付けを少しでも手伝う。
会社の給湯室にたまっている洗い物をする。

周りの人のために、
私に出来る事を、

それもいつもの仕事ではない事を、
しなきゃあ、ダメなのね。

明るく元気に会社の階段を駆け上がり、
『おはようございます！』

という、
ホンワカH君の声を聞きながら、

私もいい人になった気分だった。