おかしいなあ、
どうして、見間違ったのかしら？

と、
思うことがある。

例えば、
新人T君とラガーマンM君だ。

本日も、間違った。
確かに、真正面であったが、

私の視線は、
少し下だったかも知れない。

彼は、
私の横をすり抜けて、

お客様と挨拶をしていた。
『あら、釧路でご一緒したから、

ご挨拶をしたのね』
と、思った。

彼は、駐車場に飛んでいき、
邪魔になっている社車を動かしていた。

私は、彼の動きの良さを、
いつもながら、機敏と思った。

で、二階に上がり、
事務室で、

『ラガーマンM君が社車を動かしてくれたわ』
と言ったら、

みんながくすりと笑った。
そこには、

不満げな顔をしたラガーマンM君がいた。
『車を動かしたのは、新人T君です…』

あ、そうなの？

ラガーマンM君は、アラフォーだ。
新人T君は、20代、

二人とも、
中肉中背で、メガネをかけているが、

それ以外、
共通点はない。

『声も似ていたんだよ！』
と言ったけれど、

ラガーマンM君は、テノールだし、
新人T君は、バス系…

けして、
高い声ではないのに…

おかしい…

が、しかし、
若い人に間違えられたラガーマンM君が、

不満げな顔をするのはおかしい。
それは、新人T君の方だろうと、

思うが、
賢い新人T君は、

そんな素振りも見せない。
えらいもんだ。

まあ、
それにしても、

目撃者の証言！ほど、
当てにならないものはないということか、

新人T君との付き合いは、
3ヶ月ほどだが、

ラガーマンM君とは、
うん十年だ。

なのに、
見間違った。

それも、近距離で。

人間の思い込みとは、
そんなものか、

いつかどこかで、
『あの時あったのは、間違いなくむつみさんです！』

なんて、
誤認逮捕されないか、

不安になった今日だった。