日刊せみなりーBLOG
時代の流れ…
更新日:2015/07/03
急ぎの用があり、
タクシーに乗った。
それでも間に合いそうもなく、
タクシーから向かい先に電話を入れたら、
それを聞いていたタクシーの運転手さんが、
『便利な時代ですね』と言った。
私は、『そうですね、
昔は、FAXすらなかったですものね』
と返したら、
その運転手さんは、びっくりするようなことを言われた。
『私が社会人になったのは、
昭和33年ですが、その当時、一流企業にはFAXがありましたよ!』
うそおお?!
とは、言わなかったけれど、
『そうですかあ』という言葉は、
かなり疑いのイントネーションになっていたと思う。
それにしても、
昭和33年に社会人になったと言うこの方は何歳だろう。
目的地までの間、色々話した所によると、
この運転手さんは、
大手企業やお役所に、
事務机や椅子などを、
納める会社に勤めていたらしい。
『お客さん、昔、木の机の時代には、
道庁仕様、郵便局仕様というのがあってね、
でも、
大手企業はすぐにスチール製になりましたよ。
高かったけれど、
使いやすいとか言ってね。』
すごい、昭和30年代の話だ。
私がまだ、小学生低学年の頃、
うちには、電話なんかなかったし、
記憶の底では、郵便局も木の机だった気がする。
私が社会人になったのは、
昭和52年だが、
そこの病院には、
木の事務机がまだあったように思う。
FAXが各詰所についたのは、
昭和55年頃だったろうか、
大手企業は、
何でも早くから手に入れるのだな。
と思った。
その後、その運転手さんは、
昔の金庫や計算機の話をしてくれたが、
それは多いに興味をそそられる内容だった。
『運転手さん、
運転手さんがお勤めになっていた会社はどちらなんですか?』
何気に聞いたら、
『うん、今はもうないんですよ。50年続いたんですけどね。』
と、言われた。
タクシーは、
順調に目的地に着いたが、
降り際、
一番の気になっていることを、聞いた。
『運転手さんは、戦後生まれですか?』
運転手さんは、にっこり笑い、
『そのだいぶ前だね。タクシーの運転手?
東京で29年間やったよ。
妻子を札幌においてね。
戻ってきたけれど、
やっぱり、働いていた方がいいから、
札幌でタクシーに乗って4年です。』
たった10分そこそこの時間で、
事務所に必要な物の話から、
おひとりの人生に触れた気がした。
戦後、日本を作ってこられたのは、
この運転手さんのような方々なのだ。
と、思った。
今、会社では、
FAXよりスキャンして添付!が多くなり、
新しい椅子は、
『なんか、軽っぽくないですか?』
と、軽量化が進んでいる。
なんだか、10分で戦後を駆け抜けた気分になった。