私は、
手作業が苦手だ。

はじめてのアルバイトは、
ガリ版の印刷と、封筒入れだったような気がするが、

全く出来なくて呆れられた。
時は移り、

現代は、ガリ版は無くなったが、
代わりにコピー機なるものが幅をきかし、

『コピーくらい、誰だってできるでしょう！』
と言われるが、

先日、とある所に提出した書類が、
返されてきた。

『公的証明書と書かれている用紙に、
直接コピーをして下さい。』

と、言われ。
その用紙には、枠が書かれており、

その小さな枠の中に、
免許証などのコピーをしなければならないらしい。

『わ！技術が要りますね！』
と電話で言ったら、

電話口の女性は、
私が冗談を言ったと思ったらしく、

優しく笑ってくれたが、
これは、冗談ではない。

だって、コピーって、
逆になるでしょ？

この作業は憂鬱だった。
まず、その四角く括られた中に、

外れなく入らなければならない。
当たり前に、逆にならないように…

左右によりすぎないように…
そんな事が出来るのかしら…

総務の仕事は、
基本、私の仕事なので、

仕方ない、
やるかあ…と思ったが、

まずは、経理…まずは、……
と、横入りの仕事を自ら作り、

たかがコピー、
されどコピーで、手がつかない。

私の机の上で、
その仕事は、『いつから開始ですかあ？』

と出番を待っていたが、
私は毎日、見て見ぬ振り…だった。

そして、最後に残ったのは、
その仕事となり、

苦手意識はダメよ！
と、本日、取り掛かることにした。

まずは、
たくさん失敗しても大丈夫なように、

用紙の予備をコピーする。
そして、最後のコピー用紙は裏紙を使用し、

試し刷りをする事にした。
逆になるって、どっちかな、

上下左右……？
と不安になりながら、

裏紙を使用した試し刷りをした。
まずは、

モゴモゴN社長の免許証を借りて、
(どんな風に刷れるのかしら)

と、スタートキーをプチン。

コピー機は、
小さな音をスーとたてて、

A4番を輩出した。
どれどれ…

あれ？どこも逆でないわ。

コピーはごく普通に、
上下左右問題なく印刷されていた。

あら、そうなの？
いつからなの？

おかしいわね、
私が頻繁にコピーをしていた時は、

確か、用紙に対して、
逆にコピーされていたような気がしたが…

まあ、いいか。
お陰で、

たくさんの予備コピー用紙は使うことなく、
あんなに憂鬱だったコピーは、

あっという間に終了した。
こんな事だったら、

さっさとすれば良かった。

いつの間にか、
コピー機は、簡単で性能が良くなり、

『この枠に中に、
免許書のコピーをして下さい。』

と言う、
至難の技を容易にしてくれたのだ。

…と思ったが、
もしかして、これは昔から、

簡単な事だったのだろうか。
まあいいや、

カッコマンH君やラガーマンM君の免許証も、
上手にコピー出来たし、

むつみさんのパスポートは、
少々 難しかったけれど、

なんとかなった。

手作業が苦手なむつみさんの、
心の負担になっていた仕事が終わり、

今日は、
心置きなく眠れそうである。