私こと、
むつみさんの会社での役割は、

財務大臣&小言係である。

モゴモゴN社長は、
小言は言わない。

いや、言っているが、
モゴモゴなので、聞こえない。

私は、と言えば、
心の中で言っているつもりも、

全て、滑舌よろしく、
周りに聞こえているらしい。

お金のことも、しかり…

『あのさあ、なんで、軒高棒を壊してばかりいるのよ！
あれは、3万近くするのよ！』

と、先日も私は目を三角にして、
怒った。

軒高棒とは、
軒などの高さを測る道具で、

普段は、1・5m位に収まっているものだが、
中からスルスルと伸びて、

8mとか、
物によっては、11mまで高さを測れる。

うちでは、
色々試行錯誤の中、

黄色いプラスチック製の8mまで測れるものと、
デジタル方式の2種類を使っているが、

『すみません、でも、むつみさん、
山の中や草むらで、

一番目立つのは、
この黄色い軒高棒なんです。

だから、、、、、』

そうなのだ、
一本、3万近くするこのボッコを壊すのは、

建物調査ではなく、
木の調査で使う、【別の役割】で、

である。
測量屋さんが打った杭を、

山の中や、
自分の背丈以上ある草むらの中で見つけ、

杭から杭へ水糸を引き、
『調査箇所は、ここです！』

と写真を取っていく。
その時、この黄色いスルスル伸びるボッコは、

格好の目印になるのだ。
おまけに、軽めだ。

『いやさ、
持っていくなとは、言ってないでしょ。

気をつけて使いなさいと、
言っているのよ。』

むつみさんは、
よく通る高めの声で滑舌良く怒り、

社内はしーんとする…が、

『まあ、いい、気をつけろ』
モゴモゴN社長の一言で、

社内は再び、
いつもの空気に戻る。

『モゴモゴN社長は、
優しすぎるところがあるけれど、

むつみさんが締めるから、
バランスが取れているんですよ。』

いつだかホンワカH君が、
言っていたけれど、

まったくう！
腹たつなあ！

と、
今日も請求書を眺める私である。