短期助っ人のA君は、
長い海外での仕事から、

拠点を北海道に移して、
秋から英語を生かして働くそうだが、

その短い期間、
当社でバイトをしてくれている38歳の青年だ。

そのA君と2人で移動中、
『高度経済成長期って、どんな感じだったんですか？』

と聞かれた。

そうか、
助っ人A君は、その時代を知らないのだ。

『あのね、私が看護婦になった時、
給料は、八万くらいだったと思うけど、

毎年、2万近く上がっていったわ。

そうそう、
あのね、

私が初めて
マックのシェイクを飲んだのは、

高校の修学旅行で京都に行った時、
なんて美味しい飲み物かしらって、

感動したの。
ミスドを初めて食べた時も

確か、パルコの地下に
できたと思うんだけど、

フレンチクルーラーに感動！

それだけではないわね。
京都の東急インで、

バイキングの朝食を初めて食べた時も、
格好いい！と思ったし、

ファンタグレープを飲んだ時も
なんて美味しい飲み物かしらと

思ったけれど、
その当時、一本100円は高くて、

いつもは飲めなかった。』
ベースアップ以外、

どれもこれも
今は当たり前の事だけれど

その時は、
本当に感動したのだ。

助っ人A君は
『そう言う感動を味わえるって

しあわせですね。』
と言った。

確かにそうかもしれない。

『体に悪いものは、美味しいからね。
ワクワクしたわね。』

A君に聞かれるまで
すっかり忘れていた高度経済成長期だった。

そして、
バブル期に入り、

バブルがはじけて、
低調期に入って行った。

ワクワク感は、
なんだか、小さくなったように思う。

でも、
あの時のワクワクした食べ物は

今も普通にあり、
たまに買うけれど

あの時のように
美味しいとは思わなくなった。

きっと、贅沢になったんだね。

急に昔を思い出したら、
みんな、

ずいぶん一生懸命生きてきたのだな、
と、

なんだか、
今が不思議な気がした。