『おい、これがわかるやつはいるか、
Dropboxから、消えた…』

モゴモゴN社長が声を上げた。

『なんですっか、』
スノーマンK君、ホンワカH君、ラガーマンM君、

が、
モゴモゴN社長の机の周りに集まり、

パソコンを覗きこんだ。
『あ、これはダメっすわ』

どうも、データが消えたらしい。
ふーん、まるで自分を見ているようだ。

モゴモゴN社長は、
機械に強かった。

昔、すべてが手書きだった時代、
独学で勉強し、電子化を図った。

よくわからないが、
【ドット】と言っていた。

テレビのようなパソコンが、
全員の机の上に乗っかり、

小さなプリンターも一人一台持っていた。

『へええ、計算ができるんだ。すごい』
そのあと、独自のシステムも開発をしたり、

うちの会社は、
電子化の先端をいっていた。

それでも、図面の電子化は少々遅れた。
それも、ホンワカH君の入社と共に、

あっという間に広がったが。
その頃から、モゴモゴN社長は、

実務から外れ始め、
図面作成、積算はほとんどなくなった。

パソコンは、
『むつみさん、バージョンアップが必要です。』

を繰り返し、
気がつくと、モゴモゴN社長の、

『おーい！これ、教えてくれ！』
が、増えてきた。

それでも、まずは自分でやって見たり、
本を調べたりする。

私は、それがまどろっこしく、
『聞いたら？』というが、

すぐには聞かない。
全く、頑固なんだから…

と思いつつ、
私は、ちょこっとさみしい。

あんなにパソコンに強かったのに…

WEBが本職ではないから、
モゴモゴN社長くらい、

パソコン、iPad、スマホを使えたら、
そこそこいいのだろうが、

私は、専務から妻の顔になり、
寂しいなあ…

と思うのだ。
私が機械に弱いのは当たり前、

でも、モゴモゴN社長には、
機械に強い人であって欲しいのだ。

『モゴモゴN社長、
サーバーに保存するようにしてくださいよ』

『あー』
モゴモゴN社長は、再びパソコンに向かった。

時代は、移っているのだねえ。