日刊せみなりーBLOG

小樽旧寿原邸にて

更新日:2019/10/19

『良い立ち居振る舞いを
見せて頂きました』

本日行われた旧寿原邸リノベーション事業を
見学されたWさんの感想である。

この事業は、
NPO法人小樽民家再生プロジェクトが

小樽市から委託を受けて実施しているもので、
1回目の今日は、

リノベーションの考え方のお話のほか、
旧寿原邸の三階部分の畳を上げて、

床下を見て、
畳を再び戻す。

という工程の中で、
参加者は床板をはめ直したり、

畳を敷き直したりするのだ。
旧寿原邸は築108年の斜面に建つ豪邸。

三階も地面が見える。
2時間の研修は誠に興味深く、

20名を超える参加者は
皆さん、見たり実際に畳を持ったりされていたが、

この『立ち居振る舞い』をされたのは、
畳職人Y親方である。

Y親方は、
見た目からすると

70代か
真っ白い髪は短くて

背丈は小柄。
旧寿原邸の一階の畳は知っているが、

三階は初めて上がると
静かに話されていた。

Y親方は、
畳を上げると、

一人どこかに行かれた。
そして、

戻ってこられた時には、
手に畳い草の切れ端を持っていた。

これ、どうするんですか?

Y親方は、
『沈んでるところに入れて、平均化するんです』

と、
言われて、

なんとかという
畳に刺してちょい!と持ち上げる道具を使いながら、

参加者と一緒に、
12枚の畳を、

さささ!と敷き、
そして、

参加者が敷いた畳の向きが違うと
直していた。

畳には向きがあるらしい。
畳を上げた時、

一応畳に番号を書いたが
Y親方はそれを見ずに、

この畳はここ
次はここ

と、
サクサク敷いて、

最後は畳を見て
縁を足で踏み、

そのい草の切れ端を
畳をちょいと上げて、

畳の下に入れていった。

旧寿原邸の最後の畳の入れ替えは
なん年前かわからないが、

畳の下に敷かれた新聞紙は
昭和50年のもので、

新聞広告に、
小樽新水族館開園!とあった。

参加者は
そちらの新聞記事にも興味津々だった。

Y親方曰く
旧寿原邸の畳は

もう替えた方が良いそうだ。
それでも、Y親方は丁寧に畳を踏んでいた。

その立ち居振る舞いは、
背筋が伸びてキリッとして、

誇りと優しさに満ちていた。
姿形から仕事への愛情が伝わってくるのだ。

建物が
旧寿原邸のせいかもしれない。

でも、
Y親方を見ていたら感動で涙が出てきた。

旧寿原邸と
小樽の畳職人Yさんは、

きっと一つなのだ。
小樽の建物の修復は

小樽の職人の手に任せたいと
思った。

そして、

畳職人Yさんの立ち居振る舞いに
感動したのは私だけではないことを

参加者Wさんの言葉で知った。

小樽の宝は
建物だけではない。

それをつくって、
手がけてきた職人たちもである。

今日は良い日だと思った。

お節介の達人
マチづくりのご相談承り役 中野むつみでした。

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