社長ブログ:時にふれてBLOG

本能心を抑える

更新日:2021/11/08

今週は30回目、80ページ「本能心を抑える」です。Ouさんに読み合わせと感想をお願いしました。「まったくその通りです。自分に置き換えると、前の事務所にいたときは、常に理性心を持っていたと思います。こちらにお世話になってから、仕事柄勝ち負けがあるので、無理な頑張りをしている。頑張っていくが、あとの処理を考えていくと、社員の負担を考えるようになってきている」との感想でした。私のコメントは

「本能心を抑えるための一番良い方法は、都合の良い欲望の心が出てきたならば、 『勝手なことを思うな』と自分に言い聞かせ続けることです。この本能心を打ち消す習慣が、理性心を発露させ、正しい判断を生むのです」と書かれています。このことを稲盛和夫さんは、別の『仏教の煩悩』の観点から

三毒(欲望、怒り、愚痴)を完全に消すことはできなくても、できるだけ欲を離れること、怒りを鎮めること、愚痴を抑えることに努める―――この方法に近道はない。たとえば、日々さまざまな事柄について判断を迫られる。そんなとき瞬間的に判断を下したことは、おおむね本能(三毒)から出てきた答えだ。相手に返答する前に、最初の判断をいったん保留して、「その思いには、己の三毒が働いていないか、私心が混じっていないか」と自問することが大切だ。すなわち私心を抑えることは、利他の心に近づくことであり、自分のことは後回しにして世のため人のために尽くす利他の心が生まれたとき、人間はよりよく生きることができる」と話しています。

この「貪欲」と「怒り」は解りやすい感情です。私も全然出来ていなくて、「怒り」は車の運転ですぐ出てきます。非常識な運転、横入りなどにすぐカーとなり、妻から「ここで怒ったら、自分も同次元に落ちてしまうと塾長が教えているでしょう」と言われます。元塾長は仏門にも入り、「ブーンと手に止まった蚊も殺せなくなった。『あっちに行ってよ』と手を払うだけになった」と心境を語っていました。私もそうなりたいと思っています。

『愚痴』とは恨(うら)み、妬(ねた)み、嫉(そね)み、憎(にく)しみの心で、仏教で説かれる108の煩悩の一つです。

手塚治虫は石ノ森章太郎が生み出した仮面ライダーに幼い息子が目を輝かせて夢中になっている姿に、血が出るほどの強い力でこぶしを握り締めながら我慢して眺めていた、というエピソードを聞いたことがあります。
石ノ森章太郎は高校生で投稿した漫画が手塚治虫の目に入り、『鉄腕アトム』のアシスタントを務め、手塚の仲介で漫画家としてデビューしているのですから、まさに愛弟子といっていいのですが、そんな石ノ森に彼は文字通り血の滲むような嫉妬心を抱いていた、というのですから驚きです。

うらみ、憎しみに身を焦がす愚痴の人は、自分が受ける苦しみは全て自分のまいた種の結果だという『因果の道理』がわからず、他人のせいで自分はこんなひどい目にあったんだと恨んでいるのです。

全ては己のまいた種だった、と知らされると真っ赤にもえさかった暖炉の上に一片の雪が舞い落ちて、さっと消えていくように、うらみと憎しみいっぱいのわだかまりの心はさっと消えて心は驚くほど軽くなります。

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